古い佇まいを持つ料理屋の便所の壁はとてつもなく美しいものが多いが、それをくりぬいて美術館の壁にかけ、タイトルが「料理屋の便所の壁」だったとしたら、多くの人はそこに抵抗を感じるのだろうか。僕はそうした壁にまったく異なる意図的なタイトルを付けたり、そうした行為に意味を持たせることなく、便所からはがした美しい壁に、「便所の壁」というタイトルを付け、人々がそのタイトルを見ようが見まいが同じように「美しい」と思えるようになればいいと思う。なぜならそれは便所の壁なのだし、それは美しいのだから。
大竹伸朗「既にそこにあるもの」